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ブログ「アジアの真実」のcomments欄にアップさせていただいた『出口のない海』の感想に
その後、原作の確認をして補筆したものを掲載させていただきます。

あくまで初見の率直な私的解釈ですのでご容赦を。
また、これから御覧になる方は、内容の詳細も記述しておりますので、慎重に読み進めてください。

全体の印象は、時間軸で言うなら、4分の3は「秀作」。
残りの4分の1が「???」という作品でした。
原作を、今の段階で確認していないので、なんとも言えない所はあるのですが、

着地が実にブザマな作品に思えました。

横山秀夫の原作を、同じ佐々部監督が映像化した『半落ち』は、映像、演出、脚本、キャスティングともにヒドイものだっただけに、今作も期待よりも不安が強かったのですが、
導入部から緊張感のある腰の座った映画に仕上がっていました。

山田-富川、両名の脚本の構成力と、北野武作品でお馴染の柳島カメラマン、そして充実した美術の力を存分に味わうことができました。
市川海老蔵の落ち着いた演技には器の大きさを感じられ、彼の両親役を除けば、キャスティングも概ね成功していたのではないかと思いました。

特攻以上に逃げ場のない「回天」という作戦(兵器)に、主人公たちが乗り込む中盤までは、実に見事でした。
「結構甘い描き方」であることは否めませんが、
戦争の悲劇、狂気が静かに語られ、時折垣間見る戦時の日常の風景にはドキリとさせられ、まさに秀作の趣きでした。

ところが、終盤にさしかかると、「おや?」と思う展開になります。
(要点に´△凌字を振っておきました)

_______これより内容の詳細となります___________
主人公を含めた4人の若者が回天に乗り込むことになり、彼らが四者四様の運命をたどります。
彼ら四人の志願の動機も四者四様だろうと思うのですが、市川、柏原、伊崎の動機は明示されません。
唯一、動機が示されるのは伊勢谷のみ。最初の出撃によって一人の命が失われます。

,修猟掌紂伊勢谷本人の激白によって「志願の動機」が明かされます。
「田舎の百姓出の俺が這い上がるには、戦死して奉られて『軍神』になるしかないんだ!俺を死なせてくれ!」
その直後に艇内の神棚が映され、その下にはちょうど一人分欠けた名札が示されます。

このわかりやすいモンタージュは、私には実に安直な「靖国批判」のように思えました。

その出撃によって戦死するのは、前述の一名のみ。そして志願の理由が明確に示されるのは伊勢谷のみ。
その理由も「這い上がるために(靖国に)奉られて軍神になる」という内容のみ。伊勢谷は、死を恐れぬ大馬鹿者にしか見えません。

なんだか「靖国に奉られたいと思っているヤツ、戦死して奉られている者たちは、こんな浅はかな発想で死んでいったんだよ」
と言わんばかりでした。

主人公が後に「死ぬ覚悟なんて、実は全然できていなかった」と語るように、明示はされませんが、市川は周りに流されて、なんとなく日本のために、なんとなく家族たちのために、という感じで志願しています。
それもまた現実であったのでしょうが・・・

『WINDS OF GOD』の作・出演の今井雅之は、
「特攻に関わった人約2000人に話しを聞いたら、ほとんどの人が『負けるとわかっていた。それでも一分でも一秒でもアメリカの進軍を遅らせることができれば、みんなを救ってやれるのでは…と語ってくれた」と述べています。

あの戦争を美化するつもりはありませんので、現実には志願の理由は人それぞれであったとは思いますが、それでも
志願の動機=死を覚悟すること、とはおそらく大多数が「家族を守りたい」という気持が強かったのではないでしょうか?
「死」は物凄く怖かったし、それを乗り越えるために薬物を使用していた事実も残っています。

市川や柏原らの胸の内は明確には示されませんが、少なくとも柏原には、そのセリフ等からその思いは強かったのではと思わせるフシはありました。

しかし劇中で唯一明確に示される「志願の動機」は、
伊勢谷の「死んで軍神になる」というもののみ。
これでは、あまりにバランスを欠いているのではないでしょうか?

なんだか靖国に奉られている多くの御霊たちにとっては、気の毒と思えてなりませんでした。


さらに違和感を覚えたのは、死にそこなった主人公市川が本土に帰還するや、
「俺は"回天"という狂った兵器が存在したことを、後の人たちに伝えるために死ぬよ」などと言い出す展開です。

「なんじゃそりゃ、、、」とガックリきました。
「死」の恐怖に直面しながら、不本意ながらも「生還」を果たしながら、再び安易に、そんな俯瞰的理由で「死」に臨むことがきるのか?と、全く共感できませんでした。
何よりも、そんな「現代から過去を振り返る」ような発想を、往時の登場人物に語らせるのは、ほとんど『SF的手法』ではないか、と思いました。
こんな「製作意図をそのまま言っている」セリフには本当にシラケてしまいました。
山田洋次が、本当にこんなアホなセリフを納得して書いたのか?ちょっと信じがたいです。
____________詳細以上
"回天"という狂った兵器を巡る人々の悲劇と
"回天"を生んだ、「愛国心」を逸脱した無責任な官僚機構の暴走を
ただ淡々と冷静に描き、提示さえすれば、傑作にもなりえた素材だったのに
バランスの欠いた強引な主張が割り込んだために・・・・
なんてもったいない!というのが最終的な感想です。

私の後ろの席で観ていた若いカップルは、涙する彼女に対して「なんだこれは!」と男の方は憤慨していたことが印象に残りました。

今の時点で、原作を確認しておりませんので、映画の制作サイドの思惑というものを量ることはできません。

しかし気になったのはエンドロールでした。
チラシ等には掲載されていない「制作主任」の所に「金」「李」「王」といった名前が約4名ほど続けて見受けられたこと。
製作協賛企業に「yhoo japan」「朝日新聞社」「衛星劇場」が並んでいた点。

どうも彼らが舵をいじったのか?という疑念を拭えないのですが・・・
邪推でしょうか?

---------以上、鑑賞後の感想-----------

以下、作品をぶち壊していた以下の2点について、原作を確認してみました。

^棒谷の動機激白場面
帰還後の並木(市川)の言動

,砲弔い
原作と映画では、その内容が違っていました。

原作での伊勢谷の発言を要約すると
「隊長でありながら、死に損なって帰ってきたら生き恥をさらすことになる」
であり、
問題の
「這い上がるために、奉られて軍神になる」
といった主旨のセリフはなく
その直後の "艇内の神棚" のカットも存在しません。

従ってこのシーンのセリフとモンタージュは映画オリジナルのメッセージであったことがわかり、時勢に乗った「靖国参拝批判」であるとが推察できます。

△砲弔い
原作のダイアログ(並木-沖田)が結構流用されていました。
しかし、多くの重要なセリフが省かれてしまったために全く説得力のないやりとりになっています。

詳しくは、原作の終盤をお読みください。

主人公並木(市川)が、訓練、戦闘を経て、その心の内がどう変化していったかが、
この一連のやりとりの中で語られるのですが、映画版は、それが省略されたために
「俺は"回天"という狂った兵器が存在したことを、後の人たちに伝えるために死ぬよ」というセリフが
唐突な「テーマ棒読み」「取ってつけた的」印象になってしまい
さらに帰還後の展開までも、全く連携しなくなてってしまったのです。

原作を読んでわかったことですが、
例のセリフに至るまでの並木-沖田のやりとりの方がよっぽどスリリングで重要なテーマが込められていました。
(「男たちのYAMATO」に対するアンチテーゼ的な対話がなされます
「家族を守るため・・」という動機に対する反論も含まれますが、
それもまた否定はしきれない問い掛けをはらんでいます。)

ただ、突っ込みが足らないと思ったのは、普遍性のなさでした。

そのやりとりで語られていることは決して日本だけでに限らず、世界中で行われていて、それこそが戦争の本質の一つである、
とそこまで「普遍性」を持たせれば、反戦小説の佳作になりえたと思いました。

さらに、原作を読んで感じたことは
「俺は"回天"という狂った兵器が・・・」の部分が、実に「表層的で出来過ぎたセリフ」であるということ。
映画だとさらに、全く邪魔なセリフであったと思いました。
主人公は宣告どおりに結果的に回天を残す形で死んでいく訳ですから、これこそ「自殺」「無駄死に」と捉えかねないらです。

原作の肝心な部分が抜け落ちた、単なる靖国参拝反省猿映画と受け取られかねない仕上がりになっていました。
コメント
文章力のまずさから私のブログの感想は違ったように見えるでしょうが、同じように感じました。
正面切って反日はまずいので、NHKのようにそ〜っと上手に戦争を批判していますね。私も当時の人は本当にこんな事を言ったんだろうかと疑問に思いました。

そして、最後の特定アジアの名前、これはおかしいでしょう。ただでさえ、歴史認識がどうのこうのと平行線しか辿れないのに、日本人の為の戦争を語る映画に外国人は制作に関って欲しくないです。

同じように感じた人がいる事を知って安心しました。だから、ヒットしないんでしょうね。
  • by julia
  • 2006/09/23 6:42 PM
始まったばかりの当方のブログに、早速のコメントありがとうございます。
まぁ、始まったのも成り行きだったのですが
きっかけは「出口のない海」の批評でした。
同じように感じた人がいたのは、私もなんだか胸のつかえが取れたような気がします。

パソコンの調子が悪く、今のところ家から入力できないため、レスは遅れがち途絶えがちになるでしょうが、コメントはしっかり読ませていただきます。
いつまでこの調子で続くブログなのかわかりませんが
これからもよろしくお願いします。
  • by rooty
  • 2006/09/24 2:36 AM
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